2014年3月1日

ディストピアの中のエルドラド

急に思い立って、まさちゃんとふたりで、「としまえん」のイルミネーションを見に行って来た。


想像はしていたが、小雨降りしきる冬の夜の「としまえん」は人影もまばらだった。
場内アナウンスも華々しい音楽もなく、イルミネーションがひっそりと点灯する。

「ハウステンボス」のような溢れんばかりの光の洪水は期待しないけれど、せめて「よみうりランド」並の、ちょっと小さな歓声を上げられるくらいのイルミネーションを期待していた僕らは、どうリアクションしていいのか解らなかった。
たぶん今シーズンは、世界最大級のイルミネーションと、その反対の両方を見てしまったようだ。
 

そんなことより、ここ「としまえん」の価値は、メリーゴーランド・・・100年前に、ドイツの名工ヒューゴー・ハッセの手によって作られた、回転木馬の最高傑作「カルーセル・エルドラド」だと思った。


すべて手作りだという木製の馬や、天井に描かれた絵の1枚つづに格調の高い気品のようなものを感じる。
お客さんがいないので、係のお兄さんは僕たちふたりだけのために「カルーセル・エルドラド」を動かしてくれた。

3層のプラットホームが異なる回転速度で動くため、メリーゴーランドの中の乗り物が次々と交錯して行く。
一番外側の木馬に乗った僕らは、内側の4頭立ての馬車に追い越され、中央の柱に目をやると天使達が次々顔を出し、その向こうの遠景のイルミネーションはゆっくりと回転して見える。

ヨーロッパ各地を巡業し、その後アメリカに渡って多くの人に愛されたこの回転木馬は、100年の歳月を経て、遠い東洋の地の小雨降りしきる人影もまばらな夜の遊園地で、僕たちふたりだけを乗せ、かつての荘厳な気品を微塵も失うことなく、優雅に動き続けているのだった。

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